重要なインフラである下水・トイレのテクノロジー。浄化槽の仕組み、イバレーションシステム(蒸発散浸潤装置)、ケニアで実施されている水なしトイレや環境を守るバイオトイレをご紹介します。

更新日:2020年03月29日

現代生活において重要なインフラ、下水道の仕組みを説明します。

清潔で安全な生活をする上で欠かせない重要なインフラ、下水道の仕組みを考えていければと思います。下水と呼ばれるものは、家庭や工場から流れ出る汚水と雨水を合わせたもになります。下水には、それらを合わせて流す方法と、分けて流す方法があります。下水道には、主に三つの施設が関係しています。最初に、下水を集めて流す下水道管。下水道管が深くなりすぎないように、途中で下水を組み上げるポンプ場。最後に、下水を処理して綺麗な水にして、川や海へ流す水再生センターという三つの施設になります。最初に、下水道管について説明します。下水道管は、コンクリートや塩ビ管、陶管など様々なものがあり、太さは内径25cmから8.5m、長さは例えば、東京23区だけで約16000kmになります。この総延長の長さは、現在都市のインフラの問題として取り上げられています。高度経済成長期に施設された下水道管はちょうど買い替え時期で、今後どのように問題に取り組んでいくかが注目されています。 次に、下水が行き着く施設にポンプ場というものがあります。下水道は自然に流れていくように、傾斜をつけて作ってあります。しかし、傾斜がついているということは、そのまま流れていくと、どんどん深いところに流れていってしまいます。それをポンプ場で上に汲み上げる仕組みが必要です。大雨の際に、下水道に流れ込んだ雨水を、川や海に放流するのもポンプの役目です。そして、最後に水をきれいにするのが、水再生センターです。水再生センターは、プールのような池に下水を貯めて、それを流す工程で行われます。東京都では1日あたり約458万立方メートルの下水を処理しています。上水道を有効に活用するためにも、下水道はとても大切です。下水の処理をしっかりしないと、環境が汚染されて上水に影響してしまいます。それによって衛生状況も悪くなります。上水道にしても下水道にしても、大規模なシステムが必要です。家庭からの生活用水ということに限って言えば、テクノロジーを活用すれば、小規模に自己処理できるのではないかと考えます。これから水資源のインフラは、人口削減による規模の縮小やコスト削減、品質の低下が起こらないとも言い切れない状況にあります。山間部や地方になってしまうと、インフラそのものを維持することが困難になるとも言われてます。そうなってしまうと、下水処理自体をもっと身近に、自己処理する必要がでてきます。移動性を持たせた住宅などは、自己処理した方が効率的な生活が出来るかもしれません。日本では水資源が豊富なのであまり考えられませんが、水資源が乏しい国では、水を使って下水道を整備するという発想ができない可能性があります。その代替として、水を使わないトイレの開発が進められています。山間部で利用されるバイオトイレなどは、その場で処理を行うため、水を使わない自己処理ができるトイレと言えます。トイレで自己処理しているシステムとして、いちばん普及しているのは、浄化槽のシステムだと思います。人口密度が高い所では公共下水道を利用する方がコストは安くなりますが、人口密度が低い地域では浄化槽の方がコストが安くなります。更に、浄化槽のコストを下げれば、どこでも利用できる自己処理可能な下水施設になります。また、下水を自己処理すれば、その処理した水を再利用することができる可能性があります。処理後の水は有機物に飛んだ水なので、アクアポニックスなどに再利用することもできるのではないかと考えます。病気の蔓延を防いだり、環境汚染を抑えたりと下水道は人にとってなくてはならないものです。水資源を確保するのと同時に、下水の処理をどのようにするか、下水の自己処理など下水のインフラがなくても対応できる対策を考えておくことは、これから必要になってくると考えます。

下水道未整備地域の将来と、エコな下水道システムを考える。

下水に関する技術の紹介と、それらを支える仕組みについて細かく述べていきたいと思います。下水処理場がない場所では、下水を自己処理して処理水を流します。その際には、浄化槽を地要します。更に、排水を流すところがない場所では、イバレーションステムという仕組みを使ったりします。水資源が乏しい場所は、バイオトイレといったトイレを使って、衛生的なトイレを作ります。このような技術についてご紹介していきます。

<浄化槽システム>
浄化槽は、家庭で発生した汚水を浄化する設備になります。都市であれば大規模な下水処理場がありますが、地方ではそのような設備を設けることができない地域もあるため、個人宅で浄化槽を設置して、排水を処理する方法を採ります。浄化槽にはいくつかの種類があります。ひとつ目が単独浄化槽です。これはトイレの排水だけを浄化する浄化槽です。しかし、現在は法律の改正があり、単独浄化槽は新設ができなくなりました。ふたつ目は合併浄化槽です。合弁浄化槽は、水洗トイレの汚水と共に、台所、お風呂、洗面所、洗濯などから出る生活排水も処理する浄化槽です。現在の浄化槽というとこの合併浄化槽を指します。浄化槽の大きさは5人槽で130平方メートル未満。7人槽で130平方メートル以上。二世帯住宅などの場合は、10人槽を使います。浄化槽の耐用年数は20年から30年とされていて、定期的なメンテナンスが必要です。浄化槽の基本的な仕組みですが、「嫌気ろ床接触ばっ気方式」という一般的なものを例にとって、解説します。基本的な処理の流れは、次のようになります。

■嫌気ろ床槽
汚水は、最初に嫌気ろ床槽(第1室)に入り、固形物を除去し、「ろ材」についた嫌気性微生物(酸素がなくても動く微生物)が溶解性物質を除去します。次に、同じ仕組みの嫌気ろ床槽(第2室)を再度通ります。
■接触ばっ気槽
嫌気ろ床槽で処理された汚水は、接触ばっ気槽に入ります。これは、好気性微生物(酸素のあるところで働く微生物)がブロワーからの空気によって、溶解性物質を食べながら成長します。
■沈殿槽
接触ばっ気槽を通った汚水は、沈殿槽に流れて、汚れの原因の溶解性物質を食べて成長した微生物の塊の汚泥を沈殿させます。
■消毒槽
最後は、浄化された処理水を塩素剤で消毒してから放流という流れになります。

浄化槽では、「石井式浄化槽」の評判が良いようです。通常のBOD比較で、通常の浄化槽が10PPMのところ、1-2PPMの処理ができると実績があるようです。下手な河川の水よりきれいではないかと思われます。これを利用して、さかなを買っている人がいるといった事例がありました。
便所:汚水量50リットル/日:負荷量13g/日:濃度260mg/リットル
台所:30リットル/日:負荷量18g/日:濃度75mg/リットル
洗濯:40リットル/日:負荷量9g/日:濃度75mg/リットル
風呂:50リットル/日:負荷量9g/日:濃度75mg/リットル
洗面:20リットル/日:負荷量9g/日:濃度75mg/リットル
掃除雑用:10リットル/日:負荷量9g/日:濃度75mg/リットル
生活排水の標準的な水量・水質:合計200リットル/日:負荷量40g/日:濃度200mg/リットル

<バイオトイレ>
バイオトイレは、好気性の微生物(酸素のあるところで働く微生物)によって排泄物を分解することができるトイレです。排泄物を、「おがくず」などと混ぜ合わせて、その中で好気性微生物による分解と水分の吸収、悪臭のの軽減を行います。処理したおがくずは、園芸用の堆肥として使えるため、自然の循環の中に組み込むことができます。日本では別荘などに使うことが多いですが、下水道施設がないところであったり、発展途上国であったりでは、衛生環境を良くするためにとても有効なトイレの方式と考えられます。微生物の運動を活性化するために撹拌が必要です。手で回す方式と電気で回す方式がありますが、定期的な撹拌を行わないと微生物の運動が活性化されません。基本的には生ゴミ処理機と同じ原理で動いています。固形物など硬いものなどがあると故障の原因になるため、細かく砕かなければいけません。また、水分が多すぎると微生物の運動が悪くなるため、注意が必要です。糞尿を分離することができる特殊な便器もあります。ヒーターを使って、微生物がいちばん活発に動く温度を保つ必要もあります。太陽光発電を使って、発電した電気でヒーターや撹拌用のモーターを回しているトイレも出てきました。洗剤なども適したものを利用しないと、微生物が死んでしまうため、注意しなければいけません。水分量を適切に管理すれば、様々なメンテナンスを簡単に済ませることができます。適切な利用をすれば「おがくず」の交換などはありますが、それもほとんど必要ないようになります。メンテナンスにおいては、水分の調整が適切かどうかが、いちばんの分かれ目になると思います。
■バイオトイレの代表的なメーカー
○正和電工株式会社(北海道)
○コトヒラ工業株式会社(長野県)
○大央電設工業株式会社(長野県)
○株式会社 瀧澤(三重県)
○株式会社ミカサ(大分県)