人工知能(AI)の発達によって訪れる人が働かなくなる時代。必要といわれているベーシックインカムの説明やメリット、デメリットを解説します。

更新日:2020年04月07日

ベーシックインカムって何?ベーシックインカムのメリット、デメリット。

ベーシックインカムですが、実際にベーシックインカムとは何なのかを、メリット、デメリットを含めて、説明していければと思います。ベーシックインカムというのは、最低限度の所得を補償の社会保障です。最低限の生活をするのに必要とされるお金を、現金として定期的に支給をします。様々な社会保障はありますが、これまでと違うのは、複雑な制度体系の社会保障を、基本的には全廃してベーシックインカムに一元化して、公平に無差別に支給をするという社会保障になります。
→「すべての国民に対して最低限の生活ができる一定のお金を無条件で給付する制度です」

<ベーシックインカムのポイント>
1.年齢や居住地、年収などといった属性などに関係なく、全国民が一律の支給を受けられるということがポイント。
2.勤労の有無に関わらず、無条件に支給されるということがポイント。
3.給付金は何に使おうが、自由に利用できる現金給付ということがポイント。

ベーシックインカムの理論的な根拠は、民主主義社会の正義とは何かということになります。それは次のように考えられています。
「個人の自由が、全員平等に尊重されていること。」「機会の平等が、全員平等に与えられていること。」「実際に機会の平等が確保されるためには、生まれながらの理由による生活の格差をなるべく小さいこと。」の順に優先されます。ジョン・ロールズが唱えた「正義の原理」が近い根拠といえます。

この制度が重要なところは、自由主義、資本主義の体制で行うことが前提とされる点です。社会主義、共産主義の体制ではありません。更にとても膨大な国からの支出が必要となるため、適切な支給額とのバランスをとらなければいけません。

【メリット】
1.単純な制度設計
ベーシックインカムのメリットとして、年金、雇用保険、生活保護などの社会保障を統合することが基本となるため、社会保障制度を簡素化し、ベーシックインカムを受ける国民にとっても、現在の複雑な社会保障と違い、シンプルで分かりやすい社会保障となります。
2.運用コストが安く済む
一律給付と言うシンプルな制度のため、運用コストが少なくて済みます。そのため、受給する人の確認など複雑なことが必要なくなります。「小さな政府」を運営するのに、とても向いている仕組みと言われています。
3.働くモチベーションが保たれる。
ベーシックインカムでは所得制限がないため、基礎となる生活ができる金額を受給しながら、労働するとことができます。労働分は全て上乗せになるので、労働意欲が向上すると言われています。
4.恣意や裁量が入らない
シンプルな制度設計のために、運用する上で審査などの恣意や裁量が入りづらくなります。そのため担当者による判断など、運用の負の部分がなくなり、公平性、公正性の観点からメリットがあると言われています。
5.個人の尊厳を大切に出来る。
一律に支給されるため、生活保護受給者に見られるような、精神的に負い目を感じるといったことがなく、不平等感がでないのではないかと言われています。
<その他のメリット>
■必要最低限の生活を送れるようにするための対策なので、貧困対策になります。
■個人に対して給付が行われるため、世帯の構成人数が増えるほど収入が増えます。そのため、少子化対策になると言われています。
■全国一律同じ金額で支給がされるため、生活費の安い地方への移住が加速され、地方の活性化につながるのではないかと言われています。
■ ベーシックインカムがあることによって、雇用の流動性を生みやすくなると思います。そのため、正規雇用と非正規雇用で格差ができるのではなく、起業であったり、自分の能力を試すためにフリーランスなるであったり、非正規雇用を選ぶ方もでてくると思います。逆に、ブラック企業には人が集まらないということになります。雇用の流動性ができることで、失敗を恐れずに、やりたいことにチャレンジできる社会になると言われています。
■生活するために働くと言うことがなくなるので、余暇の自由度が増すと言われています。

【デメリット】
■「小さな政府」を志向するため、低所得者であっても、給付金額の範囲で自分で全てをまかなわなければいけなくなります。個人に責任を全て追わせる制度に、なってしまう可能性があるのではないかと懸念されています。
■低所得者に合わせていた福祉水準を、ひとつにまとめてしまうことで、きめ細やかな福祉ができなくなるではないかということです。福祉水準が低下するではないか、という懸念があります。
■景気回復が見込めない可能性もあるということも、考えられます。低所得であると、将来には不安がつきものです。恒久的なベーシックインカムが行われなくなることも考えて、ベーシックインカムで支給お金を、更に貯蓄に回すのではないかという懸念があります。
■いちばん大きな懸念点は、財源の確保です。全ての国民に対して、一律に支給するという膨大な財源を、どこで確保するのかと言う問題が発生します。
■働かなくても生活できるため、労働する必要を感じなくなってしまう人がいるということです。労働意欲が低下するのではないかという懸念があります。
■最低限の収入があるため、雇用が流動的になる懸念があります。雇用が流動的になると、クレジットカードやローンの信用枠が少なくなる可能性があります。信用枠が減るという懸念が言われています。

国家に頼らない。個人で行うベーシックインカムを提案します。

バルト三国にあるエストニアは、世界に先駆けて「e-Residency」を発行しています。「e-Residency」を取得することによって、エストニアの行政サービスを受けられます。「e-Residency」のような制度を活用することによって、国家に頼らず「生きるコスト」を下げて、擬似的なベーシックインカムのような形をとることができるのではないかと考えます。

■「AI」の進歩といったイノベーションによって、人が働かなく(けなく)なる時代がくることは考えられます。強制的にやらなければいけないことは、「AI」が補完できるようになると思います。逆に考えると、人が生存することさえできれば、後は「AI」が勝手に働いてくれれば、それはとても便利な世の中になります。お金を稼ぐための労働がなくなり、自発的な仕事ばかりできるということです。本来の価値とかけ離れたマネー経済の犠牲にならず、人としての大切な時間を確保した生活ができるということです。そのために必要と考えられるベーシックインカムですが、国家レベルで行うのはハードルが高いと思われています。ひと世代前のテクノロジーを使うことによって、それを擬似的に体現して、「生きるコスト」をゼロに近づけることができるのではないかと考えます。ベーシックインカムを達成するために「生きるためのコストを下げる」という話をしましたが、狂信的なエコロジストのように、自分の生活を犠牲にして生活をするようでは続きません。必要なのは、今の生活を変えずに、そのまま「生きるコスト」が下げるということです。卑しい生活になってもいけません。自分らしい生活をして、その「自分らしいライフスタイル」が、ある意味でお洒落で、分かる人からは、羨ましがられるような生活でなくてはいけないと思います。個性を大事にすることによって、お金ではない部分で人から羨ましがられるということです。そのためにコストを自然に下げられるようにして、時間を作ることができるようにします。そして、お金で買えない「時間」という資源を最大限に活用して、自分らしく生きていくということが、「生きるためのコストを下げる」上で、いちばん重要な要素です。そうでなければ、単純に「安い」だけの生き方では「貧富の差」を見せつけられるだけで、誰も羨ましがりません。「コストを下げる=自分らしさを」という要素が重要です。人は社会性の動物です。なので群れるということは大切な側面があります。ただ、昔の村社会のような煩わしい相互扶助があるのではなく、核家族化で個が進みすぎた個性だけの世界でもない、その両方をうまく取り込んだ、煩わしさのない社会システムを考えなければいけないと思います。新しい時代にアップデートされた「共同体」の構築も、同時に行うことが大切だと考えます。

■擬似的なベーシックインカムとして、「生きるコストを下げる」ということと、それによって小額の分散投資のリターンで生活をすることを提案しています。しかし、投資する先がなくなってしまえば、資本主義が成り立ちません。発展途上国とイノベーションを起こしている最先端分野に投資するということが、大きな投資先候補になると思いますが、発展途上国はいつかなくなるかもしれません。そうすると、最先端分野が、残された投資先になるかもしれませんが、イノベーションも段々とカテゴリが狭くなるかもしれません。「人の生きるコストを下げる」試みですが、最終的に「人の生きるコスト」が「ゼロ」にできれば資本主義が関係なくなってしまいます。この考え方の理想郷(ユートピア)は、生活に必要なものは「ゼロ」で調達できるようになるということです。「生きるコストを下げる」ことは、デフレを促進させ物価を下げることとは違います。経済は成長してよいと考えます。全ての人が資本家になり、これまでの資本家と違い月に数万円(1-3万円)程度のリターンを受け取り、それを使って擬似的なベーシックインカムを獲得します。マネー経済と実体経済のうち、実体経済の生きるために必要な最低限の商品のコストを、イノベーションを活用して下げるということです。中古市場や廉価ということだけではなく、生きるために必要な最低限の商品のコストを、民間企業が新規で生産した段階で、限りなくゼロに近づけるという試みになります。これによって擬似的なベーシックインカムを行います。最後に条件として、資本主義(マネー経済)への参加条件が、機会の平等や教育の平等に担保された「知識」という条件のみである必要があります。近い将来、「機械化」「AI化」が更に加速すると、人が全く介在せずに製品を作れるようになります。イノベーションが必要のなくなったような生活必需品は、枯れた技術を使うことによって、R&D費用も必要なくなる可能性があります。そうなってくると、原材料(リサイクル含む)費だけ、若しくは原材料の採掘も「機械化」「AI化」加速し、コストがどんどん下がっていく可能性があります。そのような進歩が進むことで、「生きるコスト」を限りなく「ゼロ」にする取り組みはできるのではないかと考えています。未来は「知識社会」になると考えられます。知識がないと「格差」が生まれる社会です。そのため教育が重要です。また、将来は人同士が知識競争をするだけではなく、その大部分を「AI」が代理で行うことになると考えられます。いかに良い「AI」持って、いかに「AI」を使いこなせるかという競争です。そうすると、いまの皆がもっているスマホのように、ある程度のスペックが誰でも担保されるようにはなるので、今までよりも知識格差が減少する希望もあります。