更新日:2020年04月02日
完全食と言われる食品があります。今回はその「完全食」を考えていこうと思います。完全食というのは、健康を維持するために必要な栄養素をすべて含む食事のことを指します。完全食の具体的な栄養価を考えるには、厚生労働省が発表している「日本人の食事摂取基準」に定める必須栄養素を全て含む食事が、完全食に近いのではないかと思います。完全食と呼ばれているものには、栄養素の過不足がないもの(完全食)と、過不足があるもの(準完全食)があり、この両方を合わせて完全食と言われています。完全食を毎日食べ続けるのは無理があると思います。食文化という観点からも問題があるのではないかと考えます。しかし、食糧事情が厳しくなった時に、最低限の食生活を確保するためには、このような完全食の考えを検討しなければならないと考えます。違う側面から見ると、現状では厚生労働省の指標を意識して食事をしている人は少ないのではないでしょうか?栄養が逆に偏ってしまい、隠れ栄養失調といった症状が現代人にみられるという意見もあります。完全食を考えるということは、現在の食生活の見直しにもなると思います。それと同時に、完全食を考えることは、食事の無駄についても考えるきっかけになります。「フードテック」という言葉をご存知でしょうか?これはフード(食品)とテクノロジーを組み合わせた造語で、食品生産や調理、流通などにIT技術を取り入れてイノベーションを起こすことを指しています。金融業界における「フィンテック」のようなもので、わかりやすく言うならば「食のIT革命」というところでしょうか。日本人の食生活は、消費とともに大量の廃棄を出していると言われています。フードテックを活用して、食品ロスを徹底的に削減し、自分の好きなものを食べるために余計な無駄を出さないようにしていくことが必要だと考えます。同時に、完全食はとても効率の良い食事なので、食品ロスの削減という点でも未来の食事と言えるのではないかと思います。無駄という話をすると、家庭で食事を作る上で実は必要な食材はそこまで多くないと思われます。昔の人は調理に時間をかけ、いろいろな調理方法を知っていました。調理方法にはさまざまな選択肢があり、バラエティに富んだ食事を作ることができたのです。しかし、現在の私たちは飽食の時代に生まれ、料理に手間をかけることが少なくなりました。料理が苦手な人も多いのではないかと思います。そのような苦手な部分をフードテックを活用して、バラエティに富んだ料理をITのサポートで作れるようになれば、効率の良い食材で栄養ある食事を摂ることができ、さらに食文化への貢献にもつながるのではないかと考えます。
<厚生労働省の指標にある栄養素>
たんぱく質、脂質、飽和脂肪酸、n-6系脂肪酸、n-3系脂肪酸、炭水化物、食物繊維、エネルギー産生栄養素バランス、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンK、ビタミンB1、ビタミンB2、ナイアシン、ビタミンB6、ビタミンB12、葉酸、パントテン酸、ビオチン、ビタミンC、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、リン、鉄、亜鉛、銅、マンガン、ヨウ素、セレン、クロム、モリブデン
<必須栄養素の過不足がないもの(完全食)>
■ソイレント:アメリカの栄養基準に準拠した完全食です。
■COMP:日本の栄養基準に準拠した完全食です。ドリンクおよびグミタイプがあります。
■BASE PASTA:パスタタイプの完全食です。
<必須栄養素の過不足があるもの(準完全食)>
キヌア、オートミール、玄米、卵、牛乳、さつまいも、納豆、ヨーグルト、トマト、ブロッコリー、リンゴ
完全食として販売されている食品を、ご紹介していきます。将来の食糧難の時代になるといったことも叫ばれています。効率的に食事をとらなければいけない状態になったりした時に、何かの考えの一助になるかもしれないと思います。
【完全食】
■ソイレント:アメリカの栄養基準に準拠した完全食です。ロブ・ラインハート氏によって開発されました。食事を不要にして、さらに正常な栄養が摂取できることを目的としています。将来的には微生物がソイレントを光や空気中から直接合成できるようにすることも考えられています。元々は食費を浮かすために作られた商品だったため、食費を低コストで抑えられるように考えられています。「生きるためのコストを下げる」という意味では無駄のない完全食というのは検討するべき食事かもしれません。しかし、2016年に作られた商品に様々な問題が発生し、具合を悪くした人が出たため、CFIA(カナダ食品検査庁)によって輸出がカナダに対して停止されました。FDA(アメリカ食品医療局)は、ダイエットサプリメントとして分類しています。人類は「食べる」という行為を有史以前から行ってきたので、栄養素だけを摂ればそれで良いのかという議論があると思います。人の本質的な部分である「食」をどう考えるか、倫理的に難しい問題もあると思います。
参考URL:http://www.soylent.me/
■COMP:日本の栄養基準に準拠した完全食です。ドリンクタイプやグミタイプで販売されています。販売開始は2018年の4月1日からです。COMPは、飲むだけでビタミン、ミネラル、脂質やタンパク質、食物繊維や糖といった人間の生命の維持に欠かせないものをバランスよく配合した「完全バランス栄養食」です。当初は飲むための粉末タイプと、そのまま食べられるグミタイプを販売していました。そのまま飲めるドリンクタイプもあります。ドリンクタイプの価格は6本セットで7800円です。一本あたり1300円となります。1リットルのカロリーが1000カロリーとなっているため、計算がしやすいように作られています。グミタイプは10袋セットで5000円です。賞味期限が1年半と長いため、防災グッズとしても利用できるのではないかと思います。ドリンクタイプ1本の容量は1リットル(1000カロリー)で、人が1日に消費するカロリーは1500~2000カロリーなので、1日あたりの出費は約2600円になります。この金額が仮に1000円を切るようになると、コストパフォーマンスの面からも効果的な食品になるかもしれません。現状では1食あたり800円強かかるという部分が少し割高かもしれません。
参考URL:http://www.comp.jp/
■BASE PASTA:パスタタイプの完全食になります。ベースフードは、1食で1日に必要な栄養素の3分の1を摂取できるように計算されている商品です。3食の食事を取ることによって、1日に必要な栄養素をまかなうことができます。様々な噛みごたえのある商品があるので、いろいろな食べ方ができます。体に必要なものを的確に摂取できるので、身体に良い食品ともいえるのではないでしょうか。商品ラインナップを見ると、BASE BREAD(冷凍パン)1食2個入り4食セットが1480円。パスタセットの「ポモドーロ/ジェノベーゼ」2食セットが980円。「焼きそば/台湾まぜそば」2食セットが980円。単品の価格は、完全食BASE BREAD(冷凍パン)が1食2個入りで390円、完全食BASE PASTAが390円、BASE PASTA専用のソースが200円で販売されています。このような価格設定になっているので、完全食としてはリーズナブルな値段設定になっているのではないかと思います.
参考URL:https://basefood.co.jp/
【準完全食】
■キヌア
キヌアはアンデス地方で食べられる雑穀です。世界での生産高は20万トン弱ととても希少なものですが、アンデスの方々にとっては数千年前から食べ続けている大切な食品です。その栄養価は天然由来のものとしては非常に高く、準完全食と言われています。リンや鉄分、ミネラルなどが豊富で、宇宙食にも採用されています。また、必須アミノ酸を多く含み、脂質がリノレン酸やオレイン酸といった不飽和脂肪酸であるため、コレステロール抑制にも役立つとして健康食品としても期待されています。特徴であるサポニンが味や栄養素の吸収を妨げるため、しっかり水で抜いて食べる必要があります。地元ではキヌアをスープで食べることが定番料理となっています。食感は独特ですが、他の食材に影響を与えないので、いろいろなスープに使うことができます。クッキーやケーキの生地にして食べることもできます。ビールのようなアルコール飲料も作られています。自然由来の準完全食品として期待される食物です.